現場で働く職員たち

なぜ訪問看護の仕事に就いたのか?
実際に働いてみて分かったこと、日々の業務の中での悩みや喜びなど、
現場の声をご紹介します。

現場の声 座談会

 写真右から
 三木愛美さん 看護師(27歳)目黒事業所 訪問看護歴 2年
 磯 郁香さん 看護師(30歳)光が丘事業所 訪問看護歴 1年半
 門脇祥太さん 理学療法士(31歳)池袋事業所 訪問看護歴 5年
 株式会社日本在宅ケア教育研究所 代表取締役 内田 英邦

――訪問看護を目指したきっかけは?

磯 以前に働いていた病院で担当していた終末期の患者さんが「好きなものを食べたい」と希望されたのですが病院では難しくて。患者さんの希望に沿えなかったことが心残りでした。ちょうどその時期に在宅なら本人の希望に沿ったケアができると聞いて興味を持ちました。

三木 私は前職が癌の専門病院だったので死と向き合う日々でプレッシャーが大きかったんです。患者さんを人でなく「疾患」として認識していることに気づいて、「何か違うな」と思い始めたのがきっかけでした。

内田 「寄り添ったケアがしたい」という希望で転職してくる人は多いですね。病院勤務では担当する患者さんの数も多いですし、じつくりと向き合うのは難しいのかもしれませんね。

門脇 私は理学療法士ですが看護師のみなさんと同じように病院でできることの限界を感じていました。病院のリハビリは退院までに「立てるようになる」「歩けるようになる」など一定の目標を達成することが求められます。でも、日常生活では不便もあるだろうなと。患者さんの「その後」が気になるようになったんです。病院勤務では残業が多くてこのままではワークライフバランスが取れないと思ったのも大きな理由でした。

前職では常にプレッシャーを感じていたとう三木さん

病院勤務時代は仕事に追われていたという
磯さん

――ナースステーション東京を選んだ理由は?

三木 ホームーページでいろいろな会社を探していて、こちらもそれで見つけました。
見学を希望して事業所に行って看護師さんや所長さんの話を聞いて、ここなら自分が求めている看護をできるのではないかと思って入社を決めました。

門脇 リハビリ職は歩合制のところもあるのですが、こちらは給与制で安定しているのが魅力でした。子供が生まれたのも転職の理由のひとつだったので保証や制度は重視しましたね。

磯 教育制度が充実していることに惹かれました。それと面接のときに履歴書に書いた「自分の強み」について聞いてくれて、「ちゃんと読んでくれているんだ」と信頼できたのが決め手だったと思います。

内田 創業者が日本訪問看護財団の事務局長をしていたこともあって、会社名も「日本在宅ケア教育研究所」なんです。かなり固い社名ですけど。看護への想いがある人に来てほしいから面接でもいろいろ聞きます。

磯 実は…面接でお会いしたときは社長は少し怖いイメージでした(笑)でも、いくつか面接を受けましたけど、どこも履歴書の内容には触れてくれなくて。一生懸命書いたんですけど伝わらなかったのかなと思っていたので、聞いていただいてうれしかったです。

初めての疾患や病状に最初は戸惑うことも多かったとか。

――実際に働いてみてどうでしたか?

三木 研修後、何回か同行したあとでもは一人で看護に行くときは不安は大きかったですね。急変したら対応できるだろうかとか。私はすごく心配性なので「どうしようどうしよう」って常に思っていて。経験豊富な先輩がしっかりサポートしてくれるので、相談しながら少しずつ覚えていく感じでした。

磯 三木さんすごく落ち着いていてそんな風に見えないけど、やっぱり最初は緊張しますよね。いろいろな病気の方がいて初めて出会う疾患もあるから、勉強が必要だなと感じることは多いですね。ご自宅に行くのは初めての経験ですしご家族とのコミュニケーションにも気を使います

門脇 そうですよね。入院しているときは看護側が「ホーム」で患者さんが「アウェイ」ですけど、在宅になると看護する側が「アウェイ」になりますから。在宅のリハビリは専用の器具もないしスペースも限られているので工夫が必要です。でも、やっていくうちにそれぞれのケースに合わせた対応ができるようになりました。

内田 ベテランの看護師さんでも最初は緊張するって言ってますね。なかには頑固な利用様もいますし、人間同士の付き合いだから相性もある。だから、看護師さんが「この人は無理」と思ったら率直に言ってほしい。状況が分かれば対応もできますからね。

磯 在宅は病院よりはスタッフに話やすい環境ですよね。それがいいところでもありますし。訪問看護のよさとしては、勤務時間が固定なので仕事とプライベートを両立しやすいことですね。長期のキャリアを考えるのにはいいと思いますね。

門脇 子育てしながら働いている方も多いので理解があって、休みを取るときにも言いやすいです。前の職場では残業は当たり前で家族と過ごす時間もなかったですから。

三木 たしかに年齢を重ねると体力的にもきつくなってくるので、夜勤や残業がないのはありがたいですね。それと当社の訪問看護は数人で一人の利用者様を担当する「チーム制」なので先輩と相談したり交代しながらできるので負担も軽減します。「今日はうまくできなかったけど次回の訪問までに対応を考えよう」と次につながる継続看護ができるのも魅力だと思います。

門脇さんは育休も取得し仕事と家庭を両立させている

――職場の環境はどうですか?

磯 とにかくスタッフの人柄がいい!明るくて、話やすいので先輩にもどんどん聞けます。それなりに経験を積むと「こんなことも知らないなんて」と思われるのが嫌で聞きにくくなるんですけど、それがないんですよね。

三木 私も面接のときに今の営業所を見学したんですが、先輩たちの看護の姿勢に感動して「ここなら」と思って入社しました。会社全体の雰囲気がいいのでどこの事業所に異動になってもなじめると思いました。

門脇 僕はステーションにいる時間で看護師さんに薬のことなども教えてもらえるのですごく助かっています。病院勤務をしていたときはみなさんすごく忙しそうで声かけられなかったので…

磯 えっ!?私もそうだったのかな…。たしかに仕事に追われているからピリピリしていたかも。理学療法士さんとお話できるのは私たちにとっても貴重な経験になるし看護にも役立つのですごくいい時間ですねよ。

三木 前職の病院はなかなか他職種のスタッフと話す機会が少なかったのですが、ここは事業所内でコミュニケーションが密なので情報交換もできますね。

内田 仕事のスタイルとしては直行直帰もできるけれど、うちでは朝と夕方に事業所に戻て来て報告する形にしています。顔を合わせて話すと報告書に書くほどではないけど気になったことを伝えられたり、仕事の困りごとを相談したりできるかなと。本当は直行直帰したいかもしれないけど。

三木 お子さんの保育園のお迎えなどがある人は直行直帰のほうがうれしいかも。事業所に戻らなくていいならフルタイム勤務の時間帯で働ける人もいると思うので。

内田 そんな事情もあるのか…。貴重な意見ありがとうございます(笑)。事業所で実際に顔を合わせて話せるメリット、直行直帰の時間的メリットなど、IT機器の導入も含めて将来的に多様な働き方ができるように検討していく必要がありますね。

職種に関係なくなんでも話し合える雰囲気が会社の魅力

――訪問看護をやっていてよかったと思ったことは?

三木 マニュアルに沿った看護に疑問を持って訪問看護の仕事をするようになったので、
一人ひとりに合ったケアができたときはうれしいですね。膀胱がんでストーマになったけど自分で交換ができない方を担当したことがありました。90歳でご高齢だったのでどうしようかと悩みましたが、試行錯誤しながら1年がかりで自分で交換できるところまで漕ぎつけて。利用者様も自信がついたみたいでした。

門脇 自分できること増えると前向きになれますよね。リハビリはある程度自立できて「卒業」できるのが理想です。社会復帰を目指して電車移動できるようにサポートして、通勤できるようになった方もいます。

磯 すべてを叶えて差し上げるのは難しいけれど、「自分らしい最期」を迎えるために一緒になって考えられるのは訪問看護ならではだと思います。ご家族の方にお礼を言われることもあるのですが、こちらのほうがいろいろなものをいただいていると感じます。

若い世代の人もぜひ挑戦してほしいという
三木さん

――訪問看護を目指す方にメッセージをお願いします

三木 一人ひとりに寄り添い、「その人らしさ」を尊重した看護がしたい人には向いている仕事だと思います。病院のような詳細な検査データがあるわけではないので、些細な変化から病状を読み取ることが必要になりますが、看護の基本が体験できる現場ですね。

門脇 病院よりも自由度があるので利用者様に寄り添ったリハビリができます。長期間にわたって担当していて回復してく姿を目の当りにすると感動しますね。利用者様やご家族と親しくなって訪問するのが楽しみになることもあります。人生の先輩からいろいろなお話を聞けるのもいい勉強になっています。

内田 ご家族との関係も近くなるので、利用様が亡くなったあとに「いい最期が迎えられた」とお礼のお手紙をいただく看護師さんもいますね。もちろんよいことばかりではなく、訪問に同行させてもらう度にホスピタリティがないとできない仕事だなと思います。

磯 訪問看護は大変なイメージがあると思いますが、先輩も含めてみなさんがしっかり支えてくれます。以前に働いていた病院の医師から「向き不向きより前向きに」というメッセージをもらったことがあります。私には向いていないと思うのではなく、前向きに取り組むことで何か見えてくるものがあると思います。少しでも興味があったら飛び込んでみてください。いろいろな強みを持った先輩がいるので自分の成長にもつながると思います。


磯 郁香(30歳)訪問看護歴 2年

心が折れそうになることもあるけど、訪問看護だからできる経験がある

民間病院に7年間勤務して循環器内科や心臓外科、脳外科、神経内科などを経験し、訪問看護に転職しました。病院では終末期で余命わずかな患者さんでも自由に過ごすことはできず「その人らしい最期」を迎えるのは難しいのが現状です。
「好きなものを食べたい」「自宅に帰りたい」と思いながらも希望が叶えられずに亡くなっていく。そんな姿に「何かできることがあったのではないか」と心残りが常にありました。ちょうどその頃に訪問看護のお話しを聞く機会があり「一人ひとりに寄り添ったケア」ができる訪問看護に興味を持つようになったんです。

でも、実際に始めてみるとケアしたことのない病気の方に出会うこともありましたし、急変したときの対応など自分で判断することが多く、心が折れそうになったこともありました。そんなときでも事業所に帰ると先輩たちが「何かあった?」とさりげなく声をかけてくれるので「一人じゃない」と思えました。看護師としてのキャリアはそれなりにあったので、相談することで「こんなことも知らないのか」と思われたら…と躊躇する気持ちもあったのですが、それを察して話しやすい雰囲気を作ってくれるのは本当に心強かったです。

病院で働いていたときは仕事に追われていて患者さんともきちんと向き合えてなかった気がします。訪問看護の仕事をするようになって「ありがとう」とか「来てくれるのを待っていた」と言っていただくことがあり、心を通わせる大切さを実感しています。
自宅で最期を迎えることを希望されていた利用者様がいました。少しずつ経口での栄養摂取が困難になり、栄養の確保をどうするのか家族と医療者で話し合いを行い、胃ろうを増設することになりました。胃ろうを増設した後に状態が悪化してそのまま病院でお看取りになってしまい、胃ろうについて情報提供したことがご本人のためになったのか…と
少し後悔していました。でも、ご家族からは「自宅で過ごす期間があってよかった」と言っていただいて。「寄り添う」ことの難しさも感じました。

訪問看護は人と人の関わりが密になるので、辛いこともありますが、その分やりがいもあります。訪問看護でしかできない経験は看護師としての成長にもつながります。
少しでも興味があれば、まずは現場を見学してみてください。何かを感じていただけると思います。


三木愛美(27歳)訪問看護歴 1年半

病院では死と向き合うことが怖かった

前職は癌の専門病院で厳しい病状の方をケアしていたこともあって、私にとって人の死はとても怖いものでした。痛みと闘いながら亡くなっていく方や家に帰ることを希望しながらも緩和病棟に移る方もいました。穏やかに自分らしい最期を迎えるケースは少なくて、看護師でありながら「死」と向かい合うことが怖かったんです。

病院では「疾患」で患者さんを認識しているようなところがあって、その方がどんな性格なのか、仕事やご家族はどうなのか、と個人について考える余裕がありませんでした。
「人」ではなく「疾患」を見ている環境に違和感があって、訪問看護を考えるようになったんです。

訪問看護で最初に看取りの現場を経験した際はやはり怖い気持ちが強かったです。
担当していた利用者様の容態が少しずつ悪くなり「エンゼルケアも自信がないし、私が訪問した日に亡くなったら…」と不安でした
でも、実際に看取りをさせてもらうと、その顔はとても穏やかで幸せそうで、これまで経験した「死」とは違うものでした。先輩たちからも「三木ちゃん、選んでもらったんだね」と言われて、やっと死と向かい合うことができた気がしました。
疾患を抱えながらもその人らしい生活をサポートできる。それが訪問看護の魅力だと思います。

病院ではマニュアルに沿った看護が中心ですが、訪問ではケースに合わせたオーダーメイドの看護です。詳細な検査データがあるわけではないので、ちょっとしたバイタルの揺れや表情の違いなど五感をフルに使って感じ取る、まさに看護に基本があると思います

まだ、経験も浅いのでうまくいかないこともありますし落ち込むときもあります。ただ、訪問看護は1日に数軒回るので気持ちの切り替えがしやすいですし、継続して担当できるので「次回はもっとがんばろう」と前向きな気持ちになれます。

訪問看護はキャリアを積んだ看護師が最終的に就く職業というイメージでしたが、現場にいると学ぶことも多く若い世代でも選択肢のひとつになると思います。
一人ひとりに寄り添った看護がしたいと思う人には向いている仕事なので、ぜひ、チャレンジしてみてください。


門脇祥太(31歳)訪問看護歴 5年

リハビリと看護、チームでできる環境がある

生活に根差したリハビリがしたいと思い訪問看護に転職しました。
病院では脳梗塞の方ならまずは立てるところまでできたら退院する、といったような
ひとまずの目標があります。でも、続けていくうちに患者さんの「その後」が気になるようになったんです。歩けるようになったのか?ご自宅で不便はないのか?と。
リハビリの本来の目的は生活をラクにすることなので、訪問ならそれができると思いました。
手すりもないし器具もない環境でのリハビリは簡単ではありませんが、工夫すればスペースがなくても道具がなくてもできることはあります。
訪問のリハビリはその人の希望を叶えることが目的なので、1時間散歩することもありますし、通勤ための電車の乗り降りをシミュレーションすることもあります
車いすの方で「旅行に行きたいから手すりのない宿でも車イスからベッドに移乗できるようになりたい」と希望された方がいて、達成できたときは私もうれしかったです。
社会復帰して「卒業」してく人を見るとこの仕事をしていてよかったなと思いますね。

病院勤務との大きな違いは看護師さんと関係でしょうか。病棟ではみなさん忙しそうで話しかけるのも遠慮していたのですが今は気軽に話せます。栄養管理や薬のことなど苦手な分野についても教えてもらえるので助かっていますね。看護師さんと理学療法士で訪問に行くこともあり、いろいろな気づきがあります。チーム医療というと大げさかもしれませんがそれぞれの専門から患者さんをサポートできていると思います。

子どもが生まれたタイミングで転職したのですが家族と過ごす時間も増えて、将来のこと考える余裕もできました。病院で働いていたときは忙しいと朝5時から夜10時まで働くライフスタイルだったので長く続けるのは難しいなと感じていました。
看護する側にゆとりがないといいケアはできないので、働く環境も重要です。
ワークライフバランスを大切にする人、コミュニケーションが得意な人にはぴったりの仕事だと思います。